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職員ブログ『環技セ日誌』

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所長コラム『随筆を掲載するにあたって』

2021.10.18 所長コラム

随筆を掲載するにあたって

学校法人香川学園宇部環境技術センター

 所長 松本治彦

 私は大学で長年に渡って「地球の現在・過去・未来(地球の環境)」、統計学、物理学などの教養教育系の授業を行っています。授業での到達目標の1つはそれぞれの分野で新聞に取り上げられている話題を理解することです。

 例えば「北極海で有望プランクトンを発見、海の生物から石油代替、世界初、バイオ燃料に期待」「地上の太陽(核融合発電)の商用化を競う日米欧・スタートアップ(ビルゲイツ支援)、グーグルなどが開発、国際熱核融合実験炉プロジェクトは2025年運転開始を目指す」「2050年温暖化ガス排出実質ゼロの切り札としてアンモニアへの注目が高まっている」「手や口を使わず「念じる」ことで意思を伝える技術がAIとの組み合わせで実現できそうだ。」「りゅうぐうの石や砂から有機物や水素を確認したと発表」「光によって㎚単位で操作できる素子を開発、病気の患部に正確に薬を届けるナノマシン」「コロナ禍、メッセンジャーRNAワクチンがこれまでのワクチンと異なるのは、体の中にウイルスのたんぱく質を作らせること」「二酸化炭素を資源と見るカーボンリサイクル」「2029年に実用的な量子コンピューター(100万量子ビット)の完成を目指すグーグル」「ホーキング博士最後の論文では近い将来、別の宇宙の存在を示す証拠が見つかる可能性に言及」「海底下2500mに大量の深部生命体の存在が明らかになった!」「日本版GPS本格運用と2025年に自動車の完全自動運転実現?」「偏西風の蛇行による異常気象の多発」などの記事が載っています。

 これらの内容をどのように 理解すればよいのか?難しい世の中になりました。しかし、今の社会では、これら情報の理解度と真偽の判断が、各人のその後の人生に影響を及ぼしてきます。

 そこで、この随筆では、読者の皆さんが「新聞で取り上げられている話題」について考える際に、知っておくと有益な話をします。

【事実と意見の区別】

 私が情報発信する時に最も注意するのは「事実と意見」の区別です。例えば、アメリカの小学生の国語の教科書には次のようなくだりが書いてあります。

 ジョージ・ワシントンは米国の最も偉大な大統領であった。

 ジョージ・ワシントンは米国の初代大統領であった。

という2つの文がならび、どちらの文が事実の記述か、もう一つの文に述べてあるのはどんな意見か、事実と意見とはどう違うのか、とたずねています。

 事実とは、証拠をあげて裏付けすることができるものです。意見というのは何事かについてある人が下す判断です。他の人はその判断に同意するかもしれないし、同意しないかもしれないのです。

【科学の特徴】

 科学の特徴は「書き換えられる」です。例えば、文学作品は、完成した後に世に出るため、書き換えられることはありません。しかし、現在も進みつつあるこの世界に生きている我々は、すべての物語が終わった後に歴史を見ているわけではありません。今この瞬間にも、科学の歴史は作られています。科学では、これまで正しいとされていたことが、どんどん書き換わっています。それが、むしろ自然なのです。だから、科学の世界で本当に価値のあることは、知識なり情報なりの「結果」ではなく、それらをいかにして得たかという「過程」のほうです。結果は書き換えられても、過程はそうではない。そこで得られた「考え方」や「やり方」は、無駄になることなく、それらを踏まえて再び考えることで、新たな「考え方」や「やり方」に発展させることができるのです。